車を売買するときには、その車の情報をなるべく相手に伝えて双方が納得したうえで売買契約をする必要があります。
ただ、自動車は複雑な機械でもあるので、すべてのコンディションをオーナー自身も知らないこともあります。
そこで重要になってくるのが瑕疵担保責任というもの。
瑕疵担保責任とはどういったものなのか、
瑕疵保責任に問われた場合はどうなるのか
車の売買に関するトラブルを避けるための知識として知っておきましょう。
車に関する瑕疵担保責任とは
瑕疵(かし)にはどんなものが当てはまる?
車のおける瑕疵としてよく挙げられるのが、エンジンからの異音やオイル漏れ、走行中の振動や足回りからの異音などが多いです。
これらの不具合が常に発生している場合は、買取のための査定などでも発見することができるのですが、「たまにしか確認できない」というケースもあります。
これらの不具合や異音について、買取査定を依頼したときに査定士に申告しなかった場合、査定士にとっては見つけられない瑕疵ということになります。
エンジンからの異音
エンジンオイルの管理が悪い車の場合、エンジンが冷えているときにだけエンジン内部から異音がすることもあります。
他にも一定の条件が揃わないと異音が再現されないこともよくあることで、整備士をしていて、お客様から異音の診断をしていても見つけられないこともよくあります。
車の買取査定では、実際に車に乗り込んで公道を走らせることはできないので、走行中にだけするようなエンジンの異音は見つけることができません。
エンジンやオートマチックの警告灯
車のメーターの中にあるさまざまな警告灯や表示灯がありますが、エンジン警告灯やABS、オートマチックの警告灯は車の価値を決めるうえで重要な内容です。
ですが、警告灯がたまにしか点灯しないようなケースも多く、こちらの不具合に関しても、外部診断機を接続して車の査定をするようなことはしませんので見つけることはほぼできません。
オイル漏れを意図的に隠すケース
たとえば、オイル漏れを起こしている車の買取査定をする前に、高圧洗浄機やオイル漏れの洗浄剤などを利用してオイル漏れ部分をわからないようにしていることもあります。
とくに中古車買取店でも悪質な業者の場合、オークションに出品するまえにこれらの処置をしてからオークション会場に車を持ち込むなどの事例です。
エンジンオイルやオートマチックからのオイル漏れや、エンジンからの冷却水の漏れなどには、少しづつ漏れるようなものもあり、洗浄した直後ではまず発見することはできません。
ここまでやると、もやは隠蔽工作となり、瑕疵担保責任というよりも詐欺罪に近い悪質な行為といえます。
瑕疵担保責任に問われるとどうなる?
車の売買契約を交わしたあとで隠れたる瑕疵が見つかった時点から1年以内に損害賠償の請求をすることができ、責任義務が生じます。
実際にどんな責任を負うことになるのかを知っておきましょう。
契約の解除
売買契約を解除され、場合によっては査定にかかった費用やキャンセル料を請求される可能性もあります。
買取額の減額
買い取ったあとで重大な不具合が発覚した場合、その不具合を修理するための費用分を買取額から差し引かれることがあります。
ただし、この瑕疵担保責任を拡大解釈し、査定の段階では高い査定額を提示して、売買契約書を交わしたあとで減額してくる悪質な業者もいます。
キャンセル料の請求や輸送の実費などを請求される
すでに新しい買い手が見つかった場合、その業者から瑕疵について指摘されてしまった場合は、第三者にも損害を与えたことになり、輸送費やキャンセル料を請求されることもあります。
瑕疵担保責任と車の売買契約書について
売買契約書の裏の約款をチェック
大手の車買取店の売買契約書の裏側にはびっしりと「約款」と呼ばれる「約束ごと」が書かれていて、なにかトラブルが発生したときには、この約款に従わなければなりません。
車の売買に関してはこの約款の内容は大手の買取店ならだいたい同じような内容になっていて、ここでは業界のお手本のような約款を参考にして瑕疵の取り扱いについて触れていきます。
JPUCの売買契約書の約款を例にしてみる
JPUC(じぇいぱっく)とは、「一般社団法人日本自動車購入協会」のことを指し、大手の買取店や企業のほとんどが参加する業界の健全化を目的に活動する団体です。
そのため、JPUC(じぇいぱっく)が作成しているモデル約款こそ、買取業界での約款の「お手本」となり、この約款よりもかけ離れたものが使われることは少ないです。
瑕疵などに関する申告義務
売主は契約車両につき、本契約締結時の自己に判明している範囲でその使用状況、品質、瑕疵の有無及び程度等を誠実に買主に対し申告しなければならないものとする。
解説
この約款の項目の中にある「使用状況、品質、瑕疵の有無及び程度等を誠実に買主に対し申告」という部分ですが、どこまでを「誠実」と捉えるのか、少々あいまいに感じるところではあります。
つまり、誠実に言おうとは思っていても、一般ユーザーさんはあくまでも車に関する知識は多くないので、どこがどうなっているという具体的な表現もままならない部分はあります。
誠実に車の状態について話そうと思っていても、わずかな異音や一瞬だけ点灯した警告灯については忘れてしまっていることもあります。
それに対して、査定する側の査定士や店舗スタッフはプロなので、「見落としていました」などとあとで申告するのは後出しジャンケンみたいでユーザーの理解を得られないでしょう。
契約解除についての記述
契約車両につき、中古自動車取引業界における一般的かつ標準的な車両検査(修復歴の基準については一般財団法人日本自動車査定協会が定める基準、走行距離に関する瑕疵においては一般社団法人日本オートオークション協議会への照会を実施)において判明しない瑕疵があることが判明したとき契約解除ができる
解説
とくに走行距離の改ざんや修復歴などが判明した場合は、その車の価値が大きく下がってしまうため査定額の減額ではなく、契約の解除になってしまうケースが多いようです。
ただし、修復歴に関してもプロの査定士が査定士ていた場合は、ユーザー本人も知らないケースもあり、プロが見てもわからないレベルに関してはいきなりの契約解除にはならないかもしれません。
【まとめ】瑕疵担保責任は車の売買を健全化するためのもの
今回は瑕疵担保責任について基本的なことをご説明しましたが、この記事を読んだ方は「買取店に有利になるためでしょ?」と思われたかもしれません。
ですが、不正をしてでも車を高く売ろうとしている人が得をするようになってしまえば、中古車はどんどん怪しいものばかりになってしまいます。
金額と車の価値が釣り合った取引がされていけば、その車を次に購入するセカンドユーザーに適正な価格で中古車を販売することにつながります。
車の売買での「瑕疵」って常識的なレベル?
車だけでなく不動産でもよく登場する「瑕疵」という言葉ですが、この意味を都合のいいように解釈して後出しジャンケンのように車を買い取ったあとで買取額を減額してくる業者もいるようです。
ですが、買取業界で長くやっていくにはユーザーからの口コミも非常に大事ですし、SNSなどを使って一般ユーザーが声を上げることもできる時代です。
買取企業もそこはよくわかっているので、瑕疵担保責任を悪用するような業者にはいずれお客様も来てくれなくなるでしょう。
あくまでも瑕疵とは念の為のもの
あまりにも悪質な売り主に対抗するために瑕疵担保責任について売買契約書でも触れていますが、買取業者にはプロの査定士がいるわけで、「査定のときはわかりませんでした」では一般ユーザーには理解されにくいです。
悪質で巧妙な手口で不正に車を高く売ろうとしている人を牽制する意味もあり、瑕疵について約款でも書いていると考えておけばいいでしょう。
信頼できる買取業者を探すには
買取業者とのトラブルがあればいろんな媒体で取り上げられることが多く、とくにインターネットの普及で一般ユーザーにも発言力があります。
口コミは大事
より多くのユーザーからの支持を受けているような買取店では瑕疵担保責任を悪用するようなことはかえってリスクになってしまいます。
せっかく築き上げた信用をわずか数万円の修理費でどちらが持つのか、みたいなことで悪い口コミを書かれることは避けたいのです。
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